栄養補給と保温
親や巣を探す間、または弱っていたり怪我をしていて一時的に保護する場合、 まずは栄養補給を行います。
つばめは自然では昆虫のみ食べる鳥です。
パン、穀物、牛乳、果物などは与えないでください。
補液について
巣から落ちて長時間給餌を受けていないヒナは脱水症状が出ている場合が多く見られるそうです。 右の写真のヒナは、兄弟に比べ成長が遅れていたため、親鳥から餌をもらう回数が少なく、衰弱して巣から落ちました。 写真1は落巣する数時間前、まだ巣内に居る時の様子です。目の周りが窪んだようになっていますが、これは脱水症状の現われで、目の周囲の水分を多く含んだ組織の脱水によって起こります。さらに、暑さでクチバシを開けてあえいでいる様子が見て取れます。また、元気の無いヒナは、首をすくめたように小さくなっています。 このようなヒナを保護した場合、すぐに補液をします。
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写真1:落巣前
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どの家庭にでもあるものとしては、砂糖をぬるま湯に溶かしたもので結構です。濃度は5%にして下さい。 栄養があるからと急に糖度の高いものを与えると血糖値が突然上がりすぎて死んでしまうことがあります。 その他使えるものは、ポカリスエット等スポーツドリンクを水で倍に希釈したもの、5%ブドウ糖溶液など。 ヒナがくちばしを閉じた状態のときに、くちばしの端の黄色い部分に濡らすようにつけてやると、吸い取って飲みます。
ヒナが口を開けた状態のときには絶対に水を流し込まないで下さい。気管に水が入って窒息死する事があります。
水分を与えすぎると下痢をしますので、分量は1回に1滴、一時間おき程度で良いのですが、写真のヒナはスプーンでクチバシを濡らしてやると、目の色を変えてスプーンに齧り付き、かなりの量の砂糖水を飲みました。それだけ喉が渇いていたのだと思います。その後、すり餌とミルワームを与え、保温をして元気になったので巣に戻すと、翌日には写真2のように、目も開いてしっかり体を起こせるまでに回復していました。
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写真2:応急処置後巣に戻す(翌日撮影)
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臨時の餌
保護したヒナが口を開けて餌をねだるようなら、餌を与えます。 鳥の口の中は、気管と食道の入り口が近くなっています。(右図参照)
気管に餌や水が入ると最悪の場合窒息死する事がありますので、餌を与える時は、喉の一番奥まで押し込むようにして与えて下さい。喉の奥を刺激されると、反射的に飲み込みます。 <参考になるページ> すずめっ子クラブWIKI 鳥の体について(←鳥の口の中の写真あり)
【与える餌】 小型の飛翔性昆虫 (固い殻や羽根、足、蜂などの場合針は取る。詳しくはコチラを参照) 野菜や植木に付く青虫など 臨時のエサ:固湯でタマゴすりつぶしペースト、ドッグフード等
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↓鳥の口の中
絶対に開いた口に 水を入れないで下さい!!
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【用意するもの】 虫を与える場合‥先のまるいピンセット、箸 臨時のエサの場合‥割り箸をへら状に薄く削り、先端の角を取って丸く削った給餌器を用意します。
【臨時のエサの作り方】
・固ゆで卵を裏ごしするかすり鉢で摺り潰して白身と黄身が混ざるくらいよく練り、お湯を加えて加えて柔らかくしたもの(お味噌程度)白身は蛋白質が豊富で、黄身はビタミン・ミネラル豊富です。どちらも使って下さい。すり鉢などが無い場合は、清潔なビニール袋にゆで卵を入れて指で潰しても良いです(H.Nピルクルさんから情報を頂きました)
・ドッグフード、九官鳥の餌などはお湯でふやかす。どちらも温度は人肌より少し温かいくらいにしてください。食い付きが悪い時は少し砂糖を足しても良いです。(5%程度)
【与え方】
右上の図にあるように、鳥の食道の入り口は口の中一番奥です。 すぐ近くに気管の入り口があるので躊躇せず一番奥に餌を入れます。 ゆでタマゴペーストやドッグフードは、給餌器に 小豆大ほどの分量の餌を乗せて喉の奥に押し込むように与えます。虫も同様に、大きすぎるものはちぎり、固い羽根や足、針など危険なものを取って与えます。
【餌の量】 ヒナの成長にもよりますが小豆大3粒程度を一度に与える量の目安に、フンの様子を見ながら与えます。
【給餌の間隔】 巣立ち前のヒナ・・・30分 巣立ったヒナ・・・・1時間 ただしこれは最低限の目安です。もっとねだればもっと与えても良いですが、フンが出ない間は次の給餌はせず、充分保温をして下さい。 餌をよく消化するには保温が必要です。
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強制給餌 弱っていたり怯えていたりして自分から口を開けない場合は、強制給餌が必要です。
給餌のために鳥を保定する時は、頭が動かないように、まず親指と中指で顔の両側を挟むようにして、翼を閉じた状態で上から掴みます。仰向けにし、しっかり3本の指で頭の左右と頭頂部を固定します。心持ち首を伸ばすようにすると餌を飲み込ませやすいです。翼を開けないように胴体を残りの指と掌で握りますが、胸やお腹は圧迫しないようにして下さい。
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ヒナのクチバシの端の柔らかい白〜黄色い部分に小さい木のへら(アイスのスプーンなどでも良いです)を滑り込ませ、クチバシをこじ開けます。無理に大きく広げすぎると、クチバシが折れてしまいますので、餌を押し込める程度で良いです。 親指をクチバシに挟んで開いている状態で固定し、エサを喉の奥に入れます。餌の量は、ヒナの成長にもよりますが小豆大3粒程度を一度の目安にその後フンの様子を見ながら、巣立ち前のヒナなら30分に一度、巣立ったヒナなら1時間に一度を目安に与えます。 フンが出ない間は次の給餌はしないで充分保温をして下さい。餌をよく消化するには保温が必要です。
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鳥の体温は40度以上あります。特に幼いヒナの羽毛は体温が逃げやすく、低体温になるとそれだけで体力を消耗して弱ってしまいます。 また、内臓の働きも低下し、下痢を起こしてしまいます。 巣箱を用意し、以下の方法で保温を行ってください。
保温箱作り
(1)用意するもの
a.プラスチックの籠や紙の空き箱
巣箱は大きすぎないほうが熱が逃げません。
つばめはある程度育つと、巣箱の外にフンを
しますので、箱は深すぎないほうが良いです。
b.お湯を入れたペットボトル
お湯の温度は約60〜80度
c.小さなカップ(プリンなどの空になったものなど)
d.脱脂綿
e.新聞紙 数枚
f.温度計
g.布類
ペットボトルを巻くタオル
巣箱内に敷く柔らかい綿の布(下着などの素材)
巣箱にかけるタオル(厚手のハンドタオル等)
ダンボールに掛ける布(白っぽいもの)
h.巣箱を入れるダンボール
i .60Wの電気スタンド
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(2)作り方
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お湯を入れたペットボトルを火傷しないようにタオルで包み、表面の温度が40度位になるようにしたものを巣箱に入れ、新聞を丸めたものを箱の空いている部分に詰める。
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その上に新聞紙を何重かに敷く。
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細かく割いた新聞紙を敷き詰め、ヒナを置く。 吸水性が良く柔らかい綿の布(下着の素材が良い)を敷くと尚良い。(タオルは不可)
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ヒナの上にタオルをかける。※このときタオルの端と箱の隙間は換気と、ヒナが暑くなった時の逃げ場を作るために開けておきます。
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ダンボールに巣箱、温度計を入れる。 保温の為に濡らした脱脂綿を入れたカップをいれ、倒れないようにガムテープなどで固定する。 (フンをするので、巣箱の下に新聞を敷く)
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こちらも換気の為の隙間を開けて布をかける。日中はある程度外の光が入るように白っぽい布が良いです。
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温度が低い時は電気スタンドの熱で温める。 (写真は少し近付け過ぎ。20センチ程離して片側からあてる。)
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その他の保温方法 ※安全のため(5)注意点もご参照ください。
・ペットヒーター(パネルタイプ)
・ひよこ電球
・電気あんか(人間用)
・ホットカーペット
※使い捨てカイロは酸欠の恐れがありますのでなるべく使用しないで下さい
(ほかに何も無い場合、箱の外から貼るなど充分換気出来る状態で使用する)
(3)温度管理
巣箱内の温度管理をしてください。
適温 孵化直後は39度 白い棘のような物(羽管)で覆われていて羽根が開いていないヒナは35〜38度 少し黒い羽根が生えていたら32〜35度
ペットボトルのお湯の温度をチェックして冷めたら暖かいお湯と交換してください。 鳥は暑いとくちばしを開いてあえぐように呼吸したり、翼を広げて体温を逃がそうとします。寒いと体を膨らませたり、翼に顔を突っこんだりします。様子を観察してこまめに温度調節をしてください。
(4)湿度
ヒナに最適な湿度は色々な説があるようですが、50%〜70%が良いとする説が多いです。特に乾燥する季節は巣箱(外箱)の中に濡れタオルを入れたりして巣箱内が乾燥しないようにしてください。 ※ヒナに直接当たらないようにしてください。
(5)注意点
人間用の電気あんかやホットカーペットを使用する場合は、直接ヒナに触れると熱すぎる場合がありますので、新聞や布を乗せるなどして表面の温度を確認してから使ってください。
お部屋でファンヒーターを使っている場合は直接風が当たらないようにしてください。
暖房器具を使用する時は乾燥に注意してください。
夏も部屋の冷房はかけないでください。
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巣立ってからも室温の管理をしてください。室温は最低でも26度、30度以上でも寒がることがあります。 巣箱の中でフンをしていたら、すぐに取り除いてください。
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